令和8年度 会長あいさつ
| 東京都小学校道徳教育研究会 会 長 星野 典靖 (昭島市立田中小学校長) |
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現在の教育は大きな転換期にあります。中央教育審議会の論点整理では、予測困難な時代において、主体的に未来を切り拓く資質・能力の育成が求められています。知識・技能に加え、思考力・判断力・表現力、さらには学びに向かう人間性をバランスよく育てることの重要性が示されました。この方向性は、道徳教育の本質と深く重なります。多様な価値観の中で、自他を尊重し、対話を通してよりよく判断しようとしたり、自らの生き方を問い続けたりする姿勢を育むことは、これからの社会を生きる子供たちには不可欠です。「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実させる視点は、道徳科の授業そのものに通じています。本会では、「『考え、議論する道徳』の実装」のフェーズに向けた授業改善を一層推進してまいります。
さて、令和7年度の大学入学共通テストの15科目の問題をAIに解かせたとき、その得点率が96.8%という高い正答率を示したとの報道がありました。今やAIは知識や計算の面で人間と同じくらい、あるいはそれ以上の力をもっていることが分かりました。しかし、それと同時に、「AIをどう使うか」は人間に委ねられていることもはっきりしました。
そこで大切になるのが、思考、判断、行動などを通してよりよく生きるための営みを支え、道徳的行為を可能にする人格的特性の基盤となる「道徳性」です。AIは一見正しいと思われる答えを出してくれますが、それが本当に自分自身や集団・社会のためになるとは限りません。だからこそ、AIの出した答えをそのまま信じるのではなく、「これでよいのか」と考えることが大切なのです。また、AIに頼りすぎると、自分で考える力が低下するという心配もあります。最終的にどのように行動するのかを決めるのは人間であり、その結果に責任をもつのも人間です。つまり、「道徳性」を養うことで、AIを正しく使い、周りの人や社会にとってよりよい形で役立てることができます。
道徳教育の目標は「道徳性」を養うことであり、その要である道徳科の授業は大変重要な役割を担っています。道徳科の授業では、多様な思いや考え等に触れ、自分とは異なる立場を理解・尊重しながら、「何がよりよいことなのか」を考える経験を積むことができます。これは、AIにはできない極めて人間らしい学びです。これからの社会では、AIを使う力だけでなく、それを正しく使うための「道徳性」がますます重要になります。その基盤を養う道徳教育や道徳科の授業は、これからの時代にとって欠かすことのできないものだと考えます。
その具現化のために、本会では、児童が自ら問いをもち、多面的・多角的に考え、自己の生き方と結び付けていく学びを重視し、教材研究や発問、話合い活動の質の向上に取り組んでまいります。さらに、デジタル学習基盤の活用や情報モラルの指導、学校・家庭・地域の連携、特別支援学級における道徳科の授業等も大切な課題と捉えて、研究を進めてまいります。
これらに加え、私たち教師自身が学び続けることも大変重要です。これまでと同様に、本会は「研究は厳しく、人間関係は温かく」を合い言葉に、互いに学び合い、実践を高め合う場として機能するよう努めてまいります。
子供たちがよりよく生きようとする力を育み、東京都の道徳教育の一層の充実を図るため、研究主題「児童が主体的に道徳性を養う道徳科の指導~道徳科の特質を踏まえた指導の工夫~」を目指して、研究活動に邁進する所存です。どうぞよろしくお願いいたします。
